2022年10月17日に投稿

過去記事まとめ(バント編)

はじめに

本記事では、これまでに行った野球の簡単なデータ分析のうち、バントに関するもの(2つ)を紹介します。

元記事

背景

セイバーメトリクスの文脈では、バントの有効性に対して懐疑的な立場を取っているものが多くあります。
最も簡潔な分析として、得点期待値を用いたものがあります。
ここで得点期待値とは、あるアウトカウントおよびある走者状況において、攻撃終了時までに取ることができる得点の期待値のことを指します [1]。
例えば、無死一塁時の得点期待値が 0.807 点、一死二塁時の得点期待値が 0.682点のとき([1]に準拠)、仮に送りバントを100%の確率で成功させたとしても、0.125点の得点期待値を失うことになり、得点期待値上は効果的な作戦と言えないことが分かります。
 
この得点期待値を用いた分析の欠点として、打順による打力の変動を考慮できない点が挙げられます。
この欠点への対処として、本分析ではアウトカウント、走者状況に加えて打順を考慮した得点期待値を算出し、バントの有効性について議論しています。

方法

打順を考慮した得点期待値の算出にあたって、最大の障壁となるのはサンプル数の確保だと考えられます。
本分析では、実際の試合からの算出ではなく、自作のシミュレータによって得点期待値の算出を試みます。
元記事では、実際の感覚とのギャップが得られることを重視したため、12球団の打順別成績ではなく、特定のチーム・打線を用いて得点期待値を算出しています。
具体的には、ソフトバンク・西武について、1シーズンの打席数が多い選手が最もスタメンに起用されている試合のスターティングメンバーを用いています。

次に、対象となるスターティングメンバーの打撃成績を確率に置き換え、シミュレーションで100万試合を計算、得点期待値を求めます。バント成功前後で想定されるアウトカウント及び走者状況の組について、得点期待値の大小関係を調べ、バント後の得点期待値がバント前の得点期待値を上回る場合にバントが有効であるとみなします。
なお、バント成功率は100%を想定しています。

結果・考察

各打順について54通り(打順9、アウトカウント2、ランナー3(一塁、二塁、一二塁))の比較を行いましたが、全てのパターンについて得点期待値が減少することが分かりました。打順による打力の変動を考慮したとしても、本分析の設定では送りバントによって得点期待値が上がる場面が無いことが確認できました。

西武・金子のヒッティング、送りバント成功時の得点期待値増減



先行研究(ごくごく一部)

  • DELTAアナリスト市川さんは、バントについて多くの分析記事を執筆されています [2]。
  • 因果推論を用いた分析 [3]。打力差をはじめとする状況の差異を是正する手段として因果推論を使用されています。

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